非常に珍しいことだけれど、この数日能動的に生活の傍ら断捨離をしている。軽快に動けている、と高揚した直後に頭痛と吐き気と閃輝暗点で倒れ込み、体温を測ると37.2℃、といったことが頻発するのを除けば革命的なまでに素晴らしい日々を送っていると言って差し支えないのかもしれない。

ずっとこの行動力が続けばどれだけいいだろう、と思う。

健全なニンゲンに近い生活がそう続かないことなんて、ずっと前から知っている。

 

お風呂上がり、一足先にリビングへ向かった幼児が、わァ、と声を漏らし、「ママ、ちょっとこっちにおいでよ」とやさしい声で言った。幼児は天窓を指差した。

「あのね、おふろから あがって、ふぅ、って上をみたらね、みて、お月さまがとってもきれいなの」

幼児はやわらかく小さな手を上へかざして、何かをそっとつかまえる素振りをしたあと、おいしい、とはにかんんだ。今夜のお月さまは葡萄の味がするという。

真似て私も手をかざし、月から何かを与えられた素振りをした。それを子と分け合うと、今度は"ぷるんと"の味がすると笑った。"ぷるんと"というのは個包装されたこんにゃくゼリーの商品名を略したものだ。子はそのゼリーがたまらなく好きで、いつも宝物のように大切に食べる。月は宝物にもなるのかもしれない。

 

夜更かしした日は眠るのが怖い。

これを書いたら諦めて眠る。

朝まで目を覚ましませんように。

悪夢で目が覚めた。
背を伝う冷や汗と共に夢の詳細は砂が風に吹かれるように消えていったけれど、何かの褒美と称して魚屋を3軒まわって買い占めたような量の新鮮な魚が届き、酷く体調の悪い中それを当日中にすべて捌いてどうにか保存できる状態にしてやらねばならない、という場面があった。何かは知らないが契約ごとに関する難解な稟議を通し、承認時のコメントに並んだ顔も覚えていないお偉方が酷く巫山戯た文言を残していて、その中に魚の贈答を示唆するものがあった。憤りを向けるにはあまりにも意思能力を欠いた文章で、私は大量の魚の透き通った目に映されながら、もう何年も魚など捌いていないことを思い出していた。冷や汗が引くのを感じて時計を見たら0時56分とあって、何だか現実でも遣り切れない気持ちで堪らなくなってきたので要らん夜更かしをしている。そういうことをするから翌朝辛くなる。

 

やらなければならないことが多過ぎる、と日々嘆いているけれど、今日に関しては事を済ます時間があったにも関わらずただ怠惰で時を食い潰していた。そんなことをしたらもう「時間がない」なんて言い訳は出来ないよなあ、最近はもう、何をどのように片付けていたのか思い出せなくて、あんなに整然と整えておかなければ気が済まない性分だったのに、部屋も仕事も自分も何もかもぐちゃぐちゃになっている。散らばったものを見てもどうやって片付けるかを考えられず、ただただ「散らかっているな…」と呆然とするしか出来なくなってしまった。それがとても悲しい。目線を部屋へ移す。洗濯物が点在している。酒を煽る。醜態を肴にしている、と思う。本当に何もかも、酷い有り様だなあ。

本を読まなくなって久しい。最近業務上のごく単純な会話すら言い淀んだり噛んだりすることが多く、本を読まなければいけないな、と思うなどしていた。口語において、いくらか砕けたところで大きな問題にはならないとはいえ、それでも文法ってとても大事だと思う。まあ私はそれ以前の問題で躓いているのだけれど…。

 

毎日毎日、汚泥で窒息するような切実さもないまま死を願っている。私の基準では幾らか軽率であるとはいえ、これ程毎日続いていると少し心配になる。無理矢理にでも楽しい用事を押し込まないと潰れてしまいそうだけれど、そんな元気もなかなかなくて、休みの日は気持ちばかりが焦りほぼずっと泣いている。そんなんじゃ駄目だ。なんとかしなくてはいけない。でもどうやって?

 

航空券を調べて、都内発と比べると随分値が上がる地方のそれに肩を落としていた。

18きっぷも出来れば今年は使いたい。けれど、と何のリスクも負いたがらない私の一部が心労ばかり重くしていく。旅ってもっと楽しいものだろうが。リスクじゃなくて対策を考えろよ、と思うのだけれど、すぐに対応できない自らの愚鈍さにまた落ち込んだりしている。何一つ学ばないし堂々巡りばかりで、もう何年生きているんだろうなあ。ほんとうに、そんなに生きてどうするつもりなの。

 

出来れば北海道にも行きたいし、関東にも行きたいし(鉄道博物館もいいなあ)、京都には死ぬまでに一度は会いたい友人がいるし、韓国もまた行きたいし、何ならほかの海外にも行きたいし、金沢も、奈良も、福岡も、とにかくどこにだって行きたい気持ちはあるのになあ。しにたい、という、平仮名でいうと四文字、画数でいっても十足らずのその言葉に毎日翻弄されて馬鹿みたいだ。元々馬鹿だけれど、そういった方面に限ってもっともっともっともっと馬鹿になるべきなんだ。希死念慮?なにそれ?そんなことよりさあ、来週〇〇ってお祭りあるじゃん?道中に何か知らんけど美味しい何かもあるらしいしさ、行こうよ! みたいな、抜群の能天気さを身に着ける訓練をした方がいい。元来コミュニケーション能力が高い人間はさておき、私みたいな陰鬱とした低能の中には脳にヘリウムを詰めた方が良い種類の生き物ってきっといる。支離滅裂に拍車がかかっているのはアルコール9%350mlの2本目が空きかけたからだと思う。

 

明日も仕事なので、たぶんそろそろ眠った方が良い。
きっと明日も仕事中に辛くなる。横になりたくなる。パニックを起こしかける。

けれどそんなこと、誰も興味がないんだよ。
心を潰してがんばりなさいね。
(みなさまは何卒ご自愛のもと、穏やかに良い日を過ごせますように。)